突然ですが、皆さんは電子チケット販売サービス「teket(テケト)」をご存じでしょうか?
teketは2019年10月に産声を上げたばかりのサービスです。誰でも簡単に音楽や演劇、トークイベントなどのイベントページを審査不要で即日作成でき、すぐに電子チケットを販売できます。
特徴は、ライブ配信のチケットをすぐに発行して販売できることと、リアルイベントでは会場ごとに指定席・自由席を決めることができ、指定席の席決めもWEB上で簡単に行えること。
そして最大の特徴がプロだけではなく、アマチュアの方に使いやすいサービスであること。例えば、プロモーションに利用できるイベントページや団体の紹介ページが簡単に作れたり、電子チケットでありながら、紙のチケットで行っていたような手売りやチケット管理が簡単に行えます。
まだまだ若輩者のサービスではありますが、おかげさまで約1000のアーティストや団体さまにご使用いただいています。
音楽ライブや演劇などのチケット電子化、座席の管理、来場者分析などが可能となる「teket」は、既存のチケット販売サービスと何が違うのか、利用者のどのような課題を解決していくのか。 「まずはこれから売り出していくアーティストや中堅アーティストや団体を中心に、チケットの手売り・手渡しや管理に割かれてしまう手間と時間と大幅に削減していきたい」と語る企画・開発担当者の島村さんにお話を伺いました。
突然ですが、皆さんは電子チケット販売サービス「teket(テケト)」をご存じでしょうか?
teketは2019年10月に産声を上げたばかりのサービスです。誰でも簡単に音楽や演劇、トークイベントなどのイベントページを審査不要で即日作成でき、すぐに電子チケットを販売できます。
特徴は、ライブ配信のチケットをすぐに発行して販売できることと、リアルイベントでは会場ごとに指定席・自由席を決めることができ、指定席の席決めもWEB上で簡単に行えること。
そして最大の特徴がプロだけではなく、アマチュアの方に使いやすいサービスであること。例えば、プロモーションに利用できるイベントページや団体の紹介ページが簡単に作れたり、電子チケットでありながら、紙のチケットで行っていたような手売りやチケット管理が簡単に行えます。
まだまだ若輩者のサービスではありますが、おかげさまで約1000のアーティストや団体さまにご使用いただいています。
音楽ライブや演劇などのチケット電子化、座席の管理、来場者分析などが可能となる「teket」は、既存のチケット販売サービスと何が違うのか、利用者のどのような課題を解決していくのか。 「まずはこれから売り出していくアーティストや中堅アーティストや団体を中心に、チケットの手売り・手渡しや管理に割かれてしまう手間と時間と大幅に削減していきたい」と語る企画・開発担当者の島村さんにお話を伺いました。
人物紹介
島村 奨
1990年東京出身。株式会社NTTドコモ所属。
NTTドコモの39worksプログラムを利用し、駐車場サービス「Smart Parking Peasy」の立ち上げに参画。最前線でプロダクト開発を担い、 2017年度グッドデザイン賞ベスト100およびグッドデザイン特別賞。[未来づくり] 受賞。4歳からバイオリンを始め、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラなどの複数のアマチュアオーケストラに所属する中で、その運営に課題を感じ、運営支援のサービス化を行う。
指定席のチケット販売はteketという印象はついた
― teketが正式サービスを開始した1年半が経ちました。振り返ってみて、手応えはどうですか?
アマチュアや、DIYアーティストと呼ばれるプロの方々、劇団など、自分たちでライブやイベントを企画している方々に使っていただけています。口コミで広がっているのも嬉しいです。
とくに緊急事態宣言が明けて、リアルイベントの開催が再開されてから「WEBで指定席を簡単につくれる」というteketの便利さが受け入れられています。自社でチケット販売システムを持っている会場のイベントでも、「指定席の設定がラクなのと、すぐに(即日)販売開始できる」という理由でteketを使ってくれているほどです。指定席のチケット販売はteketのイメージはついたのではないか、という手応えはあります。
逆に、大きなイベントをやっているところは、マネジメント(タレント事務所)、制作会社(企画・プロデュース)、イベンター(運営)、プレイガイドなどの担当がばらばらなので、「チケット管理がラク」「指定席の設定がラク」というteketの便利さが響きにくく広がっていないので、そこは課題ですね。
― 正式サービスから1年半で存在感を示せているのは良いですね。teketの正式リリースは2019年10月ですが、そもそも企画が走り出したのはいつぐらいからなのでしょうか?
teketは、ドコモの「39works」というプログラムを利用してアイデアを形にしました。39worksというのは、社外のパートナーとプロジェクト体制を組んで新規の事業を生み出すプログラムのことで、teketはHONEという会社と一緒に運営をしています。
企画が通って社内に向けて「新しい事業をはじめます」と宣言したのが2017年3月なので、企画段階から遡ると4年目です。
― 正式サービスがスタートするまで、けっこう時間をかけているんですね。
そうですね。teketは事前検証にかなり時間をかけました。というのも、当初から「アマチュアのアーティストに向けたサービス」を掲げていたので、社内から「ターゲットがアマチュアで本当にサービスとして成り立つのか?」と言われ続けていたんです。
それと、私自身がアマチュアオーケストラに所属していることを会社の人間は知っているので、「自分が欲しいものを(会社のお金で)つくりたいだけじゃないか」という心配もあったんだと思います。そのため、社内を説得するための検証時間が長くなったというのと、サービスとして収益をあげられるかの検証に時間がかかりました。
エンタメ市場は「1割のトップアーティストが9割の売上をつくっている」と言われています。つまり、トップアーティスト以外はあんまり儲かっていないわけです。
ぴあさんなど大手のチケット販売サービスはトップアーティストや大手事務所にあわせた設計になっています。なので、アマチュアやプロになりたての人が使おうとすると、あまり便利でないというか、けっこう大変なんですね。
そういった背景があって、アマチュアやDIYアーティストやインディーズのアーティストなど自分たちでイベントの企画や販売を行っているプロに向けたサービスはあまりありません。teketはそこで、存在感を示すことでトップアーティストの人たちにも使っていただけるサービスを目指す形でスタートしました。
コロナの影響で追加の開発資金が打ち切りに
― アマチュア向けにサービスを展開してみて実際どうでしたか?
アマチュアオーケストラを中心に営業をかけて、リリース当初から20団体ほどに使ってもらえたのですが、まだ実績もないサービスをたくさんの方がいきなり使ってくれるわけもなく、なかなか苦しいスタートでした。
ただ、使っていただいた団体の反応は良く、その方々がほかの団体におすすめしてくれる形で広がっていきました。
― なにを気に入ってくれたのでしょうか?
皆さん、「チケット管理が圧倒的に楽になった」と喜んでくださっています。
アマチュアオーケストラの公演は、私の所属している団体を例に挙げると1公演あたり約1,000名のお客様にご来場いただきます。そのうちの約9割は、団体からの手渡しや取り置きによる紙のチケットを利用していて、web上のチケットサービスを利用しての一般来場者は1割程度です。
このチケットを管理するのが本当に大変なんですね。どの団体でもチケット係になった人は練習もままならないほど多忙になってしまうんです。
それが、teketだと電子チケットで譲渡できるので、手渡しの時間や当日の取り置き・受付対応が不要になって、指定席の管理がデータ上でできるのでチケット周りが本当に楽になります。
― なるほど。
―では、リリース当初は苦しい時期があったとはいえ、順風満帆にスタートが切れた感じですか?
正直にいうと、そうでもないですね・・・・・・。
というのも、2020年3月頃から新型コロナウイルス感染症でライブなどのリアルイベントが軒並みキャンセルになりましたよね。コロナの影響で、teketを使っていただいていたリアルイベントもキャンセルが相次ぎました。登録されたイベントがどんどんキャンセルされていく様子は見ていてつらかったですね。
そのうえ、これを見たドコモ社内から、追加の開発資金の打ち切りを言い渡されました。正式サービスを開始した直後ということもあり、まだ実績も伴っていない時期だったので、社内的には、傷が浅いうちに撤退をして欲しかったんだと思います。
― そんなことが起こっていたんですね・・・・・・。
そうですね。私としては、ここで撤退する気はまったくなかったので、食い下がって交渉をしました。結果的に追加の資金はやっぱりもらえなかったんですが、今あるリソースだけでコロナ禍に対応した「ライブ配信機能」を早々にリリースしました。
結果的に「ライブ配信機能」は、コロナ禍でリアルイベントができなくなったアーティストの皆さんに寄り添える機能になれたと思います。
― あきらめずに食い下がったのはなぜですか?
サービスを開始したばかりでこれからという時だったのと、「アーティストの皆さんに寄り添うサービス」を掲げていたのに、まだ寄り添えるようなことを何もできていなかったから、でしょうか。
私自身がアマチュアオーケストラに所属していることもあり、新型コロナウイルス感染症拡大によるアーティストへの影響は身をもって体験しています。ライブやコンサートが収入源のアーティストの人は多いので、あのときは先行きが見えない不安や、新しい収入源を見つけなければいけない焦りなど、本当に大変だったと思います。
だからこそ、teketでは手数料無料期間を設けてライブ配信を色んなアーティストが行なえるようにしたり、ライブ配信をするための機材の紹介や設定などをわかりやすく解説するセミナーを定期的に開催したりなど、アーティストがコロナ禍を乗り越えられるサポートをしました。
社内的には、手数料無料はあり得ない決断に見えたと思います。でも、アーティストがいなくなったらteketの存在意義もなくなりますからね。
― 手数料無料は定期的に行われていますよね。母体がドコモということもあって、簡単に決断できるように見えなくもないので、そんな覚悟を持ってされていたとは。
決断できるように見えなくもないので、そんな覚悟を持ってされていたとは。
母体がドコモだからサービスが継続できている側面ももちろんあります。ただ、手数料無料に関しては、公演ができなくなったり、ライブハウスがつぶれたりとかが現実に起きているので、まずそこを救わないと、今後コロナ禍が落ちついても、公演をするアーティストがいなくなってしまったら本当にどうしようもないですからね。
ー ちなみに現在は、社内は協力的なんでしょうか?
タワーレコードなど大手も使うサービスに
― ピンチだったteketが上向きになっていくのはいつ頃からなんでしょうか?
ー アマチュアの方以外からも問い合わせがあったということですか?
アマチュアの方、プロの方どちらからも問い合わせをいただきました。
アマチュアは、緊急事態宣言が明けてから徐々に公演が再開されていきました。ただ、アーティストだけでなく、開催地となるホールや劇場も含めて、国のガイドラインを待ちながらの手探り状態での再開でした。「奏者間の距離を◯メートルあける」「来場者の緊急連絡先を必ず取得する」「どの来場者が、どの座席に座ったか分かるようにする」などこれまでにないルールがどんどんと増えていった時期でした。
teketは、業界の中でかなり早く緊急連絡先を事前に取得できる機能をリリースしていたので、数団体が導入したのを見て、一気に広がっていったのが印象的でした。「teketがあったから開催することができました」と言ってもらえた時は嬉しかったですね。
プロに関しては、例えば、クラシック事務所の「プロアルテムジケ」さんからは電子チケットに関するご連絡をいただいたことがきっかけで、クラシック業界のチケット販売窓口のオンライン化やキャッシュレス化を進める「プロアルテケト」というプロジェクトを協同で進めています。
インタビュー記事:クラシック音楽事務所「プロアルテムジケ」に、業界が抱える課題や変化について聞いた
ほかにも、同じドコモグループの「タワーレコード」さんからもご連絡いただき、CDをご購入いただいたお客さん向けのインストアイベントの配信でteketを利用いただいています。
タワーレコードさんの使い方は、我々も想定していないモノだったのですが、新たに機能を開発して対応させてもらいました。タワーレコードさんのような限定イベントにも対応していることで、新たな問い合わせも増えています。
― 色んな意味でコロナ禍によってteketは大きく変化したんですね。
そうですね。コロナ禍でイベントの開催にも大きな変化がありましたし、アーティストの皆さんのプロモーションや収益の方法なども変わってきています。
teketは、はじめは「アーティストの手売り問題を解決する」と謳っていましたが、コロナ禍によって電子チケットが浸透してきたのでこの問題は自然と解決しつつあります。新たな問題として、コロナ対策や、インターネット上での自己プロデュース、新しい収益の確保などがあると思うので、teketではこういった課題に対する解決をサポートしていく予定です。
コロナ対策については、すでに特設サイトをつくって対応しています。
特設サイト:teketで取り組む 新型コロナウイルス感染症対策
また、公式ホームページを持っていないアーティスト向けに、TwitterやYouTubeなどの情報をひとまとめに掲載できる「ソーシャルメディア機能」もリリースしました。今後もアーティストの皆さんにとって使い勝手の良い機能をリリースしていく予定です。
― アーティストの皆さんにteketをどのように使ってもらいなどはありますか?
「ソーシャルメディア機能」を活用して、イベント情報がまとまっているハブを目指していこうと考えています。イベントをやるとなったら、とりあえずteketに情報を入れておくイメージです。
最近だと、気になったアーティストを探すときに、Googleで検索するのではなく、YouTubeで検索する人が増えているそうです。SNSをしっかり活用しているアーティストだと、YouTubeに各SNSのリンクを集めて回遊しやすくしています。
同様にイベント情報を見た人がYouTubeのアーティストページに行って予習をしたり、teketでライブ配信を見た後にSpotifyなどのストリーミングサービスでセットリストと同じプレイリストを登録できたりといったように、他のSNSとの連携を高めてファンの方たちのライブ体験の質を高めることができるようにしていこうと考えてます。
ファンの方もteketを見ていただければイベント情報を把握できて、SNSへのシェアもそのページのリンクを貼れば大丈夫といった感じです。この使い方が浸透すれば、イベントを探しに来るお客さんも増えると思うので、アーティストの皆さんの集客のお手伝いもできると思っています。
まだ始めたばかりではありますが、力を入れて取り組んでいるのでご期待ください。