「自分がメインじゃなくてもいい」ゲーム音楽作曲家・伊藤賢治が語る、35周年公演とコミュニティづくり

teketアーティストインタビュー

「自分がメインじゃなくてもいい」ゲーム音楽作曲家・伊藤賢治が語る、35周年公演とコミュニティづくり

teketアーティストインタビュー

ゲームボーイ用ソフト『魔界塔士サ・ガ』や、スーパーファミコン用ソフト『ロマンシング サ・ガ』などの『サガ』シリーズや、『聖剣伝説』シリーズ、『パズル&ドラゴンズ』(パズドラ)など、数々のゲーム音楽を手がけてきた作曲家・伊藤賢治さん。業界では親しみを込めて「イトケンさん」と呼ばれているゲーム業界のレジェンドは、35年以上にわたって音楽活動を続けています。

2026年2月21日(土)、伊藤さんは埼玉・大宮ソニックシティで音楽活動35周年記念公演を開催します。公演時間は、なんと5時間。2バンド編成でそれぞれフルセットを演奏し、休憩を挟みながら自身の音楽人生を語り尽くします。

そんな伊藤さんの音楽活動には「コミュニティづくり」という思想があるそうです。ゲストやバンドメンバーを引き立て、自由に出入りできる場所を作る。そして「共同作業を楽しみたい」という姿勢。自身が作曲した曲に関しても、軸がブレなければ、様々な形で表現されることを楽しむ。

自ら企画を立て、実行し、35年間走り続けてきた作曲家は、何を目指してきたのか。伊藤さんが語る音楽哲学と、これからについて話を伺いました。

大宮から始まった音楽人生

——伊藤さんのルーツから聞かせてください。音楽との出会いは?

生まれは東京なんですけど、4歳から大宮に移り住んで、20代半ばくらいまでずっと大宮の実家で過ごしていました。ピアノも4歳から始めましたね。

当時、テレビやラジオで歌番組がすごく流行っていて。いわゆるベストテン番組で沢田研二さん、西城秀樹さん、野口五郎さん、郷ひろみさんとかを見て、「こういう人になりたい」って憧れがあったんですよね。女性だとピンク・レディーとか山口百恵さん、桜田淳子さんとか。

そこからしばらくして、今度はバンドの時代が来るんです。ゴダイゴ、オフコース、チューリップ。ニューミュージックだと松任谷由実さん、中島みゆきさん、さだまさしさん。フォークもあって。ジャンルが混在する時代で、小学生ながらよくチェックしていました。

——ピアノはクラシックだったんですか?

そうです。バイエルから始めて、最終的にソナチネまで進みました。ソナチネを終えると次はソナタに行くんですけど、そこまでは進めなくて。4歳から13歳まで9年間やって、最後に弾いたのはモーツァルトの『トルコ行進曲』でしたね。

中学では吹奏楽部に入って、クラリネットを担当していました。3年生のときは低音パートを任されて、バスクラリネットを吹いていました。高校では、吹奏楽部でアルトサックスを担当していました。

——今回の35周年公演は大宮ソニックシティですよね。何かご縁があるんですか?

高校生の頃にソニックシティが建設されたんですよ。それまでは大宮市民会館(現レイボックホール)でコンサートを観ていました。スターダスト☆レビューのステージとか。お客さんとして見ていたんです。

建設のときから見てるから、節目にはソニックシティで、という意識があるのかもしれませんね。

▲KENJI ITO The 30th Anniversary Concert ~supported by SQUARE ENIX~

▲KENJI ITO The 30th Anniversary Concert ~supported by SQUARE ENIX~

30周年のときもソニックシティでしたが、無観客開催だったんです。コロナ禍で、開催のタイミングがちょうど緊急事態宣言の発出が見込まれる頃だったこともあり、テレビ収録のような形式でしたね。カメラが何台もあって。ライブをしていても、お客さんの反応がないから、想像するしかないんです。向こうはこういうふうに聴いているだろう、と。やっぱりコール&レスポンスを感じ取れなかったのが大きかったので、今回はそれをリベンジできると思っています。

——teket内の応援コメントも見ていると聞きました。

かなり読んでいます。「北海道から行きます」とか「どこどこから来ます」っていうのもあるし、「親子で行きます」っていう書き込みもあって。2世代にわたって来てくれるというのは、目標でもあったのですごく嬉しいです。

5時間公演で「自分以外」を見てほしい理由

▲KENJI ITO The 30th Anniversary Concert ~supported by SQUARE ENIX~

▲KENJI ITO The 30th Anniversary Concert ~supported by SQUARE ENIX~

——今回は5時間超のかなり長い公演ですよね?

実は当初は7時間公演の予定でした(笑)。

2つのバンドが出るということで、どちらもほぼフルでやって、私自身が話したいことも持ち込んだら7時間になって。さすがに長すぎるので削って、最終的に5時間に収めました。

『サガ』公式バンドのDESTINY 8(ディスティニーエイト)と、長年一緒にロックスタイルでやってくれているスペシャルバンド、この2組での公演です。DESTINY 8は、これまで30分程度の枠での公演が中心で、フルタイムでやるのは初めてなんです。メンバーもきっと気合が入ってると思います。

——公演で見てほしいポイントは?

自分を除く、全員を見てほしいですね。自分は一歩、二歩引いて、ある意味プロデューサー視点でキーボードを弾いている感覚なんです。

だからこそ、ゲストも含めて出演をするメンバー、一人ひとりをまんべんなく見てほしいですね。今回、ボーカリストの小寺可南子さんにも参加していただきます。彼女とは長く親交があったんですけど、一緒にやるのは初めてで。自分の曲を彼女がどう歌ってくださるのか、僕もとても楽しみです。

——小寺可南子さんを筆頭に、これまでのライブとは違ったミュージシャンも参加していますよね。

ドラムにFUMIYAくんというドラマーにも参加してもらうのですが、彼の熱意がすごくて。ロマサガファンで、「四魔貴族バトル」がすごく好きらしくて、学生の頃からこういうのを叩きたいってずっと思ってました、って。

その熱意に背中を押されたんですよね。それで、1曲だけじゃなく、何曲か叩いてもらうことにしました。彼は1月後半から2月頭にかけて自分のバンド(Unlucky Morpheus)のツアーがあったらしいんですけど、35周年公演の日程が先に決まっていたので、そこを外してくれたんですよ。ありがたく、少し恐縮しました。熱い思いで臨んでくれると、こちらもちゃんと返さないと、と思いますね。

DESTINY 8のメンバーもスペシャルバンドのメンバーもみんなゲーマーで、話が早いし、逆に自分が知らないことを彼らはよく知っているんですよ。このゲームのここはああでこうでって、僕のほうが「おお…」って驚かされることもある。彼らの熱意が本当にありがたいなと思います。

「こういうふうにやりたいんだけど、どうでしょう」ってアイデアも出してくる。「いいね、やろうよ」って感じで、一緒に作っていってます。

35年かけて作った「出入り自由」のコミュニティ

——伊藤さんはライブパフォーマンスを大切にしていますよね。その根底にあるものは?

その場所で、自分の音楽を通して共有できる感じが嬉しいんですよね。いわゆるコミュニティです。大きかろうが小さかろうが、そこで一つのコミュニティができればいいなと思ってやっています。

先ほども話しましたが、自分がメインじゃなくてもいいんです。ゲストさんがいればゲストさんを立てたいし、バンドだったらバンドメンバーを「どうだ、うちのバンドメンバーはすごいだろ!」って感じてもらいたいですし、誇りを持って送り出したいんです。

いつも言ってるのは、「踏み台にしてもいいから」ということ。「伊藤賢治の曲を、こんなふうに楽しくやりました」とアピールしてくれればいいですし、逆にタイミングが合わなければ離れていってもいいんです。いつでも戻ってきてくれていいので、また戻ってきてくれたら、一緒に楽しもう、みたいな。

——「踏み台でいい」というのはすごいですね。

高い踏み台でありたいなとは思っています。「伊藤賢治と一緒にやったから、こんなステージに立てました」とか「こういう人と一緒にできました」って言えるくらい、自分も頑張らないとな、っていうところはあります。

——作曲家としてのスタンスも同様なのでしょうか?

そうですね。自分の核となる部分は、「メロディーをピアノ伴奏で弾く、もしくは歌う」。それがすべてで、アレンジに関してはどう膨らませようが構わないというスタンスです。オーケストラバージョン、ロックバージョン、いろんな膨らませ方があっていいですし、核がブレなければいいんじゃないかな、と思っています。。

アレンジャーや演奏家を選ぶとき、彼らの個性が好きだから選ぶわけで、そこに対して自分からは極力言わないようにしよう、と。よほど間違った方向に行くなら言いますけど、選ばせてもらった時点で任せています。いい意味で裏切ってくれるのも、ありですしね。

——伊藤さんはライブパフォーマンスだけではなく、ライブの企画からグッズ制作まで、ご自身で手がけることが多いですよね。近年では「DIYアーティスト」という言葉もありますが、その先駆けのような印象があります。

それは、誰もやってくれなかったからです(笑)。いろいろサポートしてくれる方々が組織としていれば、昔から任せたいことはあったんですけど。そういう意味では、結果的に鍛えられましたね。

——作曲もしながら全部やるのは大変ではないですか?

大変ですよ。ただ、やらなきゃいけないからやっているのではなくて、やりたいという思いがまず最初にあります。コミュニティだったり、ライブパフォーマンスが楽しいっていうのが根底にあって、まずやりたい、と。最近は、自分の希望を実現してくれるスタッフが集まってくれたので、そういう意味では今は幸せな立場ですね。

——伊藤さんのお話を伺っていると、やりたいことが尽きない方なんだと思いました。どうしてそんなに夢中になれるんでしょうか?

まだ完成形ではないからじゃないですかね。その時々に、「最高だった」「楽しかった」はあるけれど、てっぺんだと言い切れる瞬間にはまだ届いていないですし、もしかしたら一生ないのかもしれません。

だからこそ、いろんな形で音楽を味わえていますし、いろんな山を見てみたいという欲求もあります。だから尽きないんじゃないでしょうか。

今年より来年。毎年そう思ってますね。

公演情報

KENJI ITO CONCERT "35th Anniversary AS A COMPOSER" LIVE -gentle echo meeting

日時:2026年2月21日(土)13:00開場 14:00開演 19:00終演(予定)

会場:大宮ソニックシティ大ホール
埼玉県さいたま市大宮桜木町1-7-2

出演:伊藤 賢治、上倉 紀行、森 空青、坂田 善也 ほか

チケット:
■S席(¥9,500税込)1F 前方エリア 座席指定
■A席(¥8,500税込)1F 後方エリア 座席指定
■B席(¥8,000税込)2F 座席指定

 

teket販売ページ<https://teket.jp/13576/55230

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